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メールマガジン バックナンバー 第8号(2004.9.7)

2004.9.7(第8号)

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1.宋文洲寄稿「『完璧』への代償」
2.宋文洲の取材レポート「パワードコム 中根滋氏」(3)
3.「ここが変だよ日本のカイシャ」
宋文洲とKFi木村剛氏との対談「激論!日本再生」(下)

4.「差」が組織のエネルギー

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■1.「完璧」への代償
宋 文洲

誰もミスしたくない。誰も「完璧」を期待する。しかし、我々は「完璧」に大きな代償を払っている。

現金5円が合わないためにレジの従業員は数人で残業する。3時間後に床の隙間から5円のコインを見付けた時、コストは数万円になっている。「完璧」は非合理を招き、人々を疲労させる。

大きさと形が異なるのはキュウリの自然体である。整えたキュウリをスーパーに置くために農家は大量な不合格キュウリを捨てる。「完璧」は無駄を作り出し、環境に負荷をかける。

新規案件で四苦八苦している社員に上司が決まって「大丈夫か」と聞く。「応援するぞ」のエールではなく、「失敗するな」のプレッシャーが伝わる。「完璧」は「成功する」よりも「失敗しない」ことを誘導する。

皮肉なことに「完璧」は言葉として「完璧」ではない。本当は「完璧帰趙」である。

斉の国は戦争で趙の国に勝った。戦利品として趙の国宝を持ち帰った。この国宝は巨大な玉石で特別に「璧」と名付けられた。年月が経つと、やがて両国は友好関係を取り戻し、斉は「璧」を完全な姿で趙に返した。

このことを「完璧帰趙」といい、「元に戻す」「元通りに復元する」ことを表現する成語として残った。

「完璧」は開拓と革新を阻害する概念である。企画会議ではもっぱら新規事業の失敗リスクの議論に各人が知恵を絞る。独立や転職の際に成功への希求ではなく、失敗への恐怖を考える。

我々が批判する「減点主義」と「開拓精神の欠如」は、我々自身の「完璧」症が作り出している。

行き過ぎる「完璧」への追求は必ずミスの隠蔽と事実の操作を招く。ブランド力のある企業ほど、優秀な人間ほど、悪い事実を認めない傾向がある。我々は彼らに欠陥があるわけが無いと思うからである。

我々が彼らに欠陥と再起を許さないからである。その結果、我々が受ける被害はもっと甚大になっている。

病気と共に生きる健康体。リスクをヘッジする安全性。そして不運を前向きに受け入れる幸せな人生。「完璧」への代償に気付いた時、我々がもっと賢明になっているかもしれない。


■2.宋文洲の取材レポート「パワードコム 中根滋氏」(3)

CS満足度至上主義の虚無

顧客満足度調査の点数ほど意味のないものはない。マーケティングと営業の本質は価値の提供である。

ならば、問題は顧客の課題を捉えているかどうかになる。極論だが、だらしない営業マンでも顧客の悩みを解消する最高の方法を持っていれば「あいつはダメだが、しょうがない」と顧客が取引をする。

優しい医者がいいのか、態度は悪いけど、確実に病気を治してくれる医者がいいのかの選択である。

もちろん人柄と腕前の両方がいい医者を目指すべきだが、医者は医者である本当の価値を忘れてはいけない。

でも好かれること、良いリレーションをお客様と持ち続けていることはとても大切だ。営業マンに限らず全てのビジネスマンはIPS(INTER PERSONAL SKILL)を磨き、優秀であっても威張ってはならない。

なぜならば嫌われては価値の実現に無用なコストがかかり、資本効率が悪くなるからである。

CS満足度は、感情的で主観的なものである。顧客は感情だけでお金を払うほど愚かではない。

私はCS満足度が8.0点以上であればいいと思う(10点満点)。問題は結果的に顧客がハッピーになれるかどうかである。

顧客満足度が高くなくても製品が売れる経験を何回も経験したことがある。それだけ経営には変数が多いということである。

顧客満足度は否定しないが、価値の一側面に過ぎない。7.5と7.8の差が一体どれだけの違いを営業面でみせるか、アンケートが大切ではないんだという事が言いたい。

(続く)


■3.「ここが変だよ日本のカイシャ」
KFi株式会社代表取締役社長の木村剛氏との対談「激論!日本再生」(下)

(宋)僕は半年前、北京で記者会見を行ったのです。そこでびっくりしたのが、テレビのディレクターや偉い人達が皆30代の人だったことです。

また、国の政策を決める人達も30代です。僕は、「なんでこんなに若いのだ。50代はどうした」と聞いてみましたら、今の中国の50代や40代後半の人達は、あなたが言われたレッドパージです。パサーッといない。でも中国経済は成長している。

だから、日本は相当意識的に若くしないといけない。韓国は、意識的に若くしていると思います。サムソンの社長は40歳でしょう。30代の役員もたくさんいる。その気になればできるのです。

(木村)それと比較すると、日本では、若い経営者も少ないし、若くして経営の実権を握っているという人は少ないのではないですか。

(宋)そうですね。僕はよく、日本の経営者と中国の経営者をコーディネートしますが、完全に親子関係です。車メーカー同士、ビールメーカー同士とか、何か提携の儀式があるじゃないですか。もう完全に親子関係ですね。

(木村)親子関係でビジネスをすると、やはり子供が勝ったりするわけですか?

(宋)勝つというよりも、子供は古いことを知らない。子供は最も新しい状況に合わせて生きている。これは動物の進化と一緒です。

結局、賢い人や、強い人が進化したのではなく、たまたま変化の状況に適した人が進化したのです。それと同じように、日本の歳とった経営者は強かったかもしれない。

頭が良かったかもしれない。昔は勝ったかもしれない。でも、今の全く新しい状況に適さないと淘汰されてしまう。中国の若い連中はすごいのではなく、彼らが何も知らない点が逆に強みになっている。

よく、「日中間の差は何十年ある」とか、あるいは日本の中でも、「この会社とこの会社の差は何十年ある」と言う。「日本が、昔の状態から積み上げたのは20年。だから中国も20年かかるはずだ」と思ってしまう。

でも中国の彼らは、最初から日本の状況を知った上でやってしまう。

そうすると、「中国の人間は20年間遅れていたはずなのに、気付いたら後ろにくっついている」という状況になる。

(木村)確かに、今の日本の経営者は、環境の変化が早すぎて、ついていけないのかもしれない。

そういう意味で、日本ではどうしようもない経営者を抱える企業もあって、歩みがのろく環境にも適応していない。

ところが、中国の人達は若くして環境にものすごく合った経営をする人が出てきている。日本と中国の差は、実際問題としてものすごく縮まっている。

よく「逆転するかどうか」という議論をする人が結構いますが、仮に逆転するとして、それはいつ頃でどんな感じで起こると思いますか?

(宋)逆転はないと思います。というのも、日本人と中国人はかなり違っていて、言ってみれば牛と馬、どちらが逆転するのかという感じです(笑)。

少なくとも、あなたが言われた経営者感覚という点では、決して中国の若い人の感覚は、日本の経営者より遅れることはまずない。それは、会えば分かります。

ただし、中国には、国民の教育水準の問題、資金の問題、職員のモラルの問題とかがあります。だから、総合的な国力はまだまだ低いと思いますが、私が一番恐ろしいのは、IT業界・通信業界のワイヤレス化の問題。

日本は昔からたくさんの線を引いてきていて、設備投資を回収できていないからワイヤレスにできない。これは全く後ろ向きの理由です。

でも、中国は捨てるものがない。最初から中国人は電話を持つことを想定してないから、建物に線が通っていない。だから一気に無線で始められたのです。

それから流通の問題です。戦争直後、お腹がすいてしょうがない時に一部の業者が買物を代行したことが、日本の流通における発達の原点になった。そして、これがうまく機能し始め、日本の経済成長を支えた。

ところが、中国の場合はいきなり流通なしで始まった。何故かというと、インターネットが発達して、メーカーと消費者の末端、例えばスーパーとメーカーが直接取引を行う。

日本の場合は、問屋が3つも4つもあるのです。中国にはこれがないから、ものすごく流通コストが下がる。

日本で製造原価は低いのに安く売れない理由は、流通と販売管理部門という膨大な無駄があるからです。無駄を省く努力をするのではなく、別の意味の努力をしてしまう。きちんとした方向に頭を使っていないのです。

また、先程木村さんがおっしゃった「引退しないリーダー」の会社では、実は仕事は忙しいのです。何故かというと、社員がランダムに動いて、互いのエネルギーが上手く噛みあっていないからです。

こういう会社のリーダーは結果に対して敏感ですから、結果が出ないと社員に向かって「赤字だ。お前らやれ!数字出せ!」と言う。下の人間は徹夜とか残業です。そうすると、疲れるだけで効果が出ない。

その一方、中国は経済成長していても、6時以降にマネージャーを除けば、社員は殆どオフィスにいない。僕も田舎出身ですから、正直言って「価値は労働によって作られる」と信じていた。

僕は若い頃、マルクスもよく勉強させられたのですが、最近思ったのです。労働も一つのファクターではあるのですが、組織・国となると、やはりリーダーのマネジメントです。リーダーのマネジメントがきちんとしてないと、価値なんか作れない。

(木村)そういう面から見て、最後に一言、日本のリーダーのマネジメントに対して、こうすれば日本は変わるというのを、宋さんからドーンと言ってください(笑)。

(宋)僕がもし、日本の大きな会社のリーダーであれば、やはり精神論とか努力といったことだけを強調するのはやめたいです。

だって、努力する人は努力しますが、努力しない人間に「努力せよ」と言ったって、努力するふりをするだけなのです(笑)。努力するふりをするから、残業が多いのです。

だから、個人をどうこうするというより、きちんとマネジメントをすることです。結果を出すには、組織として、もしくは国として、どういうビジョンが必要かを具体的に言うことです。

そして、それに対して誰でもいいからやった人間をリアルタイムに評価すればいい。やらない人間には、申し訳ないけど評価しない。それだけでも日本はだいぶ良くなるのです。
(終わり)

※この対談は、木村剛氏がゲストを迎えて激論を交わす、gooの「フィナンシャル・ジャパンONLINE」の人気コーナー「激論!日本再生」(動画番組)に宋文洲が出演した時(3月26日)のものです。

「激論!日本再生」を視聴する場合はgooのフィナンシャル・ジャパンONLINE

対談内容は、木村剛氏が主催するKFiクラブの会員向けリポートで読むことができます。

■4.「差」が組織のエネルギー

日本の社会では「差」はあまり好まれない。「差」といえば、「差別」と「不平等」を連想してしまう。

営業マン全員に同様の能力が期待される。売れない営業マンが居なくなれば業績が良くなる、異なる発想を持つ社員が居なくなれば組織力が強化できると盲信する人が多い。

電気は電位の差で生まれる。風は気圧の差で吹く。組織は異なる人が居るからエネルギーが生まれる。そのエネルギーを組織力に変えるには「人の管理」ではなく、「プロセスの管理」が必須になる。

日本経済新聞の顔の一人で日頃異なる人材と異なる発想の重要性を訴える編集委員の関口さんと宋文洲で皆さんに熱く語りたい。
(編集部)

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