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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第336号(2017.09.29)

日本がまた中国の政治体制を学ぶ日

「経済一流、政治二流」。30年前によく日本人から聞いたコメントです。今思えば田中総理や中曽根総理などのような世界に通じる総理大臣と、いつでも総裁の椅子を狙う有能な政治家が自民党にたくさんいました。今のような「他に居ないから安倍総理を支持する」状況とは真逆でした。

もし今の日本の政治が二流であれば、当時の日本政治は間違いなく一流でした。

そもそも一流とか二流とかは世界との比較論の中で成り立つ話です。選挙で選ぶならば、身の回りの生活や自分の関心事に合わせて投票するのであって、世界と比較して選ぶわけではないのです。だから実のところ、一流か二流かはどうでもよいことです。

それでも当時の人々はなぜ敢えて「政治は二流」と言うかというと、それは「経済が一流」であることを強調するための言葉のバランスだと思います。日米関係に強く依存し、国際的に独自の戦略を持たない苛立ちでもあると思います。

しかし、経済が一流と言えなくなった今、日米関係に当時以上に依存しているにも関わらず、日本には「政治が二流」である意識が全く無くなっています。これこそ日本の政治的危機だと思うのです。

戦後日本は結果的に自民党の「一党独裁」でした。日本の本当の民主主義は自民党の中の派閥闘争によって実現していました。それぞれの派閥が異なる利益団体や集団に属し、異なる理念を持ちながらも反対のための反対という無駄をしませんでした。自己主張しながらも他の党内勢力との牽制や妥協を繰り返しました。

その結果、日本の政治家は確かに国際的顔を持つ人は少なかったのですが、日本の総理ということで日本国としての政治的存在感は今よりはるかにありました。それは外国にいないと分からないことです。

安倍総理はよく国内向けに自分が外交に強いようなことをアピールしますが、先日の国連演説のガラガラの会場をみれば分かるように、実態は日本の大手マスコミの宣伝とは違うのです。鳩山総理の国連演説のほうがよほど人気で聴衆が多かったです。

一党独裁でまともな党内闘争もない。国内マスコミをコントロールし、人気を演じる。選挙のテクニックだけは三代世襲のおかげで誰よりも長けて「世界一流」である。不正や失策があっても選挙に勝てばリセットされ正当化される。

このような形だけの民主主義は長期的に見た場合、国家衰退の原因にもなると私は思うのです。

国民の利益を政治と政策に反映させることに反対する国民などは居ません。皆さんと同様に私達中国人も日本人と全く同じです。違うのは体制(やり方)だけです。

13億もいれば、利益の複雑さは日本の10倍になるのです。それぞれの政党に自分の利益を代表させ、選挙戦で戦う西洋式な政治も一つの選択肢ですが、4大文明の一つとしての中国には、異なる方法で同じことを実現させようとする工夫とシステムがあってもおかしくないのです。

中国の一党独裁体制も既に70年間近く続きました。その結果、優秀な人材は殆ど共産党体制内部に集まりました。党内闘争も優秀な人材同士の戦いになり、激しさは想像を絶します。建国の父である毛沢東が死んだ途端、奥さんが逮捕されるくらいですから、どれほど党内の力が複雑かつ強力かは分かります。

国営マスコミは報道しませんが、中国人の多くは党内政治の様子を知っており、利益闘争から路線闘争までの情報を共有し、独自の方法でそれぞれへの支持と反対に加担するのです。共産党も調査機関を通じて国民の動向をよく知っているのです。政権のまずい政策が続くと国民の不満が言論からデモや暴動に発展していくので党内の反対派が自然にそれを利用して力を増していくのです。

「中国は崩壊する」と思われながら、数百年来ぶりの復興を成し遂げる事実は変わりません。年間一億人以上の国民が海外旅行を楽しんで国に戻ってくる。毎年50万人の留学生が出ていきながらほぼ同様の数の留学生が戻る。

北朝鮮のような抑圧な社会ならば、中国社会の今の活力を説明することができません。米国式の政治システムを中国に導入すべきだと考える中国人の数が急激に減ってきたは欧米の調査機関も発表しています。

中国の政治システムが優れていると思ったことがありませんが、少なくとも多くの日本人が思うほどダメなものではありません。選択肢がないのに「選んでくれた国民」に責任を押し付ける現在の選挙制度の弊害を直さないと、いずれやっぱり中国の体制がいいと日本国民は考えるのではないでしょうか。

今、こんなことを聞くと笑ってしまう人が多いかもしれませんが、20年後のことを予想できる人はいません。40年前、ソ連崩壊を予想しましたか?20年前、中国が再び世界一位のGDPを生み出すと予想できましたか?

そして2千年にもわたって日本が中国の体制を学んできた歴史にそれだけの理由はあったに違いありません。だから今日のタイトルは笑うだけで済ませるのではなく、今の日本政治を考察するヒントになれば幸いです。今日の本意はそれ以上でも以下でもありません。

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