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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第312号(2016.10.14)

外国人をもてなす前に社員を尊重して

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1.外国人をもてなす前に社員を尊重して(論長論短 No.279)
2.DIDI 滴滴打車が生み出したエコシステム
 (Yo-ren Limited CEO 金田修・連載 第3回)


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■1.論長論短 No.279

外国人をもてなす前に社員を尊重して
宋 文洲

久しぶりにソフトブレーンのセミナーで講演しました。概要と進行手順を簡潔に説明してくれた担当の女性について「仕事ができる方ですね。」と感想を漏らすと彼女の上司が「そうですよ。助かっています。しかし、彼女は今年中に辞めちゃうんですよ。」

辞める理由を聞くと「結婚して米国に移住する」と言うのですが、それでも私はついつい彼女の上司に念を押しました。

「会社よりも社員の人生。これはソフトブレーンの文化です。
どんな理由で辞めても最後の日まで気持ちよく仕事できるようにしてあげてね。」

ソフトブレーンの経営から身を引いてからもう10年が経ちました。今年の7月に形式的な経営アドバイザーも正式に辞めました。まったくの一個人として社員とかかわると、余計に個人と組織との関係が冷静に見えます。

「世界を変える」と豪語するスティーブ・ジョブズのような経営者もいますが、私にはそれはとても傲慢かつ無意味だと感じるのです。スティーブ・ジョブズも世界の一部ですから、彼は一生において自分を変えることはできませんでした。

組織は常に自分ではなく他人を変えようとします。恐ろしいのは弱い個人でも組織というレバレッジを手に入れると同じことを考えてしまうのです。しかも弱い人間ほど、弱い組織ほど、立場と権力を得ると他人を変えようとする傾向があります。

私も会社を創った直後に、社員の人生よりも会社の運営都合を優先してしまう時期がありました。社員の反抗に遭って大変苦しい時期もありました。しかし、その苦しい経験によって自分の創業の初心に立ち返ることができました。
また、その初心に立ち返ったおかげで会社が成長できた上、自分も楽に個人に戻れました。

D社の新入社員の過労死(自殺)の詳細を知れば知るほど、日本の古い組織への嫌悪感がわいてくるのです。ここ数年、日本のテレビはよく「外国人が見た素晴らしい日本」のような気持ち悪い番組を作りますが、それは観光客として、接待を受ける立場の人々の一部の見方です。

そのテレビ業界および元卸のD社に外国人が数年間同じ環境で働いてみればどうでしょう。恐らく素晴らしい組織だとお世辞でも言えないでしょう。
これらの組織は日本の政治システムに守られていて、「世間体や収入と安定性の高さなどからみても就職の最高峰」であり、政界や財界の有力者の子供がゴロゴロしていますが、今回のような環境を生み出すのであれば世界に通用する個人能力を身に付ける場所として最低でしょう。

「東大卒で優秀で努力家である」ことは入社時に役に立ったとしても入社後には何の競争力もありません。おそらく100時間以上の残業は本当の意味で顧客の役に立つ重要な仕事ではなく、諸先輩が存在感と威厳を示す相手や「女性力」という言葉を誤った形で翳される相手になったのでしょう。したがって「過労死」という定義はまったく彼女の死の本質を示していないのです。
「パワハラ」や「虐め」などのストレスが彼女を死に追い込んだ本当の理由でしょう。

十数年前、現役の私はソフトブレーンの新入社員に忠誠心や愛社精神ではなく、「会社の辞め方」を教えました。万が一、ソフトブレーンの仕事構造上、会社側がいくら努力しても、社員の人生にとってプラスにならず、ストレスの原因になるのであれば、最後の解決方法を教えたのです。会社側が辞職をマイナスとみなさず、積極的に支援することで社員を助けたかったのです。

十数年が経ちましたが、辞めた社員は他の企業で活躍する人もいれば、経営者になった人も多くいて、上場した人もいます。警察官、登山家、ボクサー、落語家になった社員もいます。何よりも一度退社して数年後に戻ってきてソフトレーンの経営を支えている幹部もたくさんいることに私は非常に満足しています。

組織は個人と同様、長い歴史の中で必ずミスをしてしまうのです。
社員個人を守る一番の仕組みとして社員を尊重し、組織の付属物にしないことです。D社は企業として組織として新入社員を自殺に追い込むつもりがあったとは決して思いませんが、閉鎖的な企業文化の恐ろしさは社員を死に追い込んでも殺人者がいないことです。

外部の客を「おもてなし」するのも良いのですが、そのために内部の方々が人生を犠牲にし、ストレスに満ちた生活するようでは意味がありません。
それを知った外部の客も楽しめないものです。

(終わり)

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■2.Yo-ren Limited CEO 金田修・連載 第3回

DIDI 滴滴打車が生み出したエコシステム

金田 修

第三回の今回は、自分の本業に近い中国デジタル市場の話をしたいと思います。
私は2009年から上海にも家を借り始めたのですが、その時点で生活する上で上海が東京より便利だったことは何一つありませんでした。現在、間違いなく上海のほうが東京より暮らしやすいことが2つあります。一つは移動で、もう一つは決済です。どちらも新規参入したベンチャー企業同士の戦いが、消費者に利便性をもたらしました。「移動」を例にとって、ご紹介したいと思います。

中国の移動は、現在アプリによって急速に進化しています。アプリを開いて移動先を入力すれば、タクシー、自家用車(いわゆるPeople Uberの世界)、ハイヤーのような専用車、通勤時などに役立つ相乗りサービス、のいずれかの移動手段を値段を比較しながら選べます。これ以外にいわゆる代行サービス、レンタカー、それに各自動車メーカーの車の試乗も、実際に乗っている人の車を借りる形で、同じアプリ上で選択して、自分の今いる場所まで迎えに来てくれます。

先月社員旅行でベトナムに隣接する広西自治区に行きましたが、自治区内のマクドナルドやスタバも一切無いようなど田舎の街でも十分利用可能でした。
価格はビッグデータを基に市場の需要と供給で決まり、事前に評価の低い運転手にNGを出して他を選んだり、事後に無駄に廻り道をしたとクレームすれば価格を再交渉することも可能です。決済にはWechat PayやAlipayが使われ、毎回自動引き落としです。一度使ったら分かりますが、中国での移動の不安が一気に解消される魔法の杖です。

このアプリサービスはまずは国内勢の戦い、次にUberとの大競争を経て、現在DIDI(滴滴打車)が支配的な位置を築いています。昨年は14億回以上利用されたとのことで、庶民の足として定着したと言って良いと思います。
このDIDIは、直近のUber中国を吸収合併した際の評価額が350億米ドル(3兆5000億円)で、テンセント、ソフトバンク、AppleやUberなどに投資されている他、自ら東南アジアのGrab、インドのOla、アメリカのLyftといった同業他社に投資していて、DIDIのアカウントはこれらのAPPでも使えるようになりつつあります。

先日ボストンに出張した際に、実際にLyftをDIDIのAPPから使ってみましたが、中国語でのサポートが充実しており、決済もWechat Payで自動決済出来るため、非常に便利でした。今アメリカを旅行するなら日本人より中国人の方が移動の不安はない状況です。今後航空会社がスターアライアンスなどの3大グローバルアライアンスによって世界中のニーズを囲い込んでいるように、移動についても世界のAPPによるネットワーク化が進む可能性もあると思います。

さて、僕なりの意味合い出しなのですが、日本はインバウンド対策として、DIDIの完璧コピーメガベンチャーを東京オリンピックに向けて創りだしてはどうでしょう?このマーケットは地方自治体の都市計画や交通行政との調整、既存業者との共存施策などが成功の鍵の一つです。ビッグデータが生きるAPPサービスではありますが、規制側が推進してマーケットメカニズムをサポートするとベンチャーとしての成功確率が大きく上がる分野です。

DIDIのメリットは、移動の自由を作り出すだけでなく、車を持つあらゆる人がサービスの提供者になれることです。外国人にとって日本旅行の大きな不安は移動です。そのせいで外国人には訪れるのが難しい場所もたくさんあると思います。
また、個人の車に乗ってもらうことは個々の生活水準の高さ、おもてなしを伝える絶好の機会になると思います。

日本人みんなで100語でいいから、語学を一つ勉強して、車で海外からのビジターをもてなそう!日本の素晴らしさをみんなが伝えられるよ!というようなスローガンでベンチャーを作って国が応援したら、タクシー会社は潰れるかもしれませんが、結果として日本人にとっても国内、国外の移動が今よりずっと楽になる可能性があると思いますし、リーダーよりも一人一人の市井の人々が強みである日本っぽいサービスが生まれる気がします。

過疎地域でフルタイムのタクシー業者は成立しなくても、車を運転出来る近くにいる人がパートタイムで支えてあげてお小遣いをもらうというモデルなら、成立する市場も多くあるのではないでしょうか。

(つづく)

金田さんが創業したYo-ren LimitedのURLはこちら↓
http://yo-ren.com/ja/

(終わり)

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