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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第290号(2015.12.11)

仕事ができる管理職ほど社長に向かない


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1.仕事ができる管理職ほど社長に向かない(論長論短 No.257)
2.あなたを捕食するサイコパス――脳科学からみた「『女』というビジネス」【前編】
  (脳科学者 中野信子さんの連載 第3回)

3.宋文洲TV出演のお知らせ(読売テレビ「そこまで言って委員会NP」)

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■1.論長論短 No.257

仕事ができる管理職ほど社長に向かない
宋 文洲

部長、副部長、次長、担当部長、部長代理、部長補佐に部長相当・・・
日本の古い会社には実に管理職が多くいます。5割以上の社員が管理職になっている企業は珍しくないのです。管理職会議の際、現場で仕事する社員がいなくなるほどです。

言わなくても多くの新入社員の目標は主任、係長、課長、部長を経て取締役を目指すことです。何歳になれば管理職のどのポストに立つかも暗黙のルールになっています。そのため、年に相応しい管理職のポストになっていないと居心地が悪くなるのです。

管理職が多いと何が起きるか。それは管理職の社員化です。本来、優秀な社員が優秀な管理職になる訳ではないのですが、皆が管理職を目指すので優秀な社員から先に管理職にするしかありません。結局、管理職は一種の社員への奨励になってしまうのです。

仕事ができる社員を管理職にする。仕事ができる管理職を役員にする。
そしてとうとう社長はそのような役員の中から選ぶことになります。
つまり社長も単なる優秀な社員や管理職なのです。

優秀な社員が管理職になり社長になった場合は悲劇が起きます。まずその社長は社員や管理職の癖を持っているため、現場の細かいことに口を挟みます。
それぞれの社員が育つための環境作りやチーム全体のマネジメントの重要性を知らない上、ノウハウもないのです。

次に、優秀な管理職が社長になった場合、現在の管理職はチャレンジしなくなります。「あの伝説を作った先輩にとてもものが言えない」、「新しいことを提案しても社長のセンスに合わないと怖い」、「先回りして反対されないことをする」などの心理が働くのでついつい保守的な風土が定着してしまうのです。

ご存じのとおり、経営は変化への対応にすぎず、永遠の勝利法などは存在しません。
変化に対応するには現在の社員達に彼らに合う方法で現在の社会環境や顧客ニーズに合う仕事をしてもらうしかありません。失敗したら励ましてあげる。
成功したら奨励をしてあげる。困難に遭ったら助けてあげる。こんな単純なことは仕事ができる管理職の人達はとても苦手なのです。

なぜでしょうか。それは彼らが管理職として成功し、その結果(奨励)として社長に選ばれたからです。社長になったことで余計に自分の管理職としての成功を経営に活かせると思い込んでいるからです。この管理能力を強調しなければ社長としての合法性や納得性が弱くなるからです。

半分の社員が管理職になり、その中から社長を誕生させるにはこのような実績主義は止むを得ません。同期や先輩がたくさんいる中、「なぜ彼を社長に選ぶのか」には実績が最も説得力があります。しかし、これは良い牛を競馬に行かすようなもので、悲惨な結果を招くケースが多いのです。

二千年前、劉邦と韓信が酒を飲みながら各自が何人の部下を統率できるかを論じました。韓信が「私は多ければ多いほどよいが、あなたは十人だろう」との話に劉邦が不快な表情を見せた。すると韓信が「あなたは将軍を卒いる。私は兵隊を卒いる」と説明しました。結局、劉邦は仕事ができる韓信を使って仕事ができる項羽に勝って天下を取りました。

伝説の営業部長、最盛期の工場長、ヒットメーカーのプロデューサー・・・
仕事ができる管理職ほど社長に向かないのは昔からの掟のようです。

(終わり)

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■2.脳科学者 中野信子さんの連載 第3回

あなたを捕食するサイコパス――脳科学からみた「『女』というビジネス」【前編】
中野 信子

サイコパス(Psychopath)、という言葉を、目にしたことのない読者はおそらくほとんどいないと思う。

テレビでコメンテーターをしていると、異様な殺人事件がしばしば取り上げられるのに遭遇する。容疑者または犯人として世間を騒がせた人物に対して「この人の脳は一体、どうなっているのでしょうか・・・?」と聞かれる。
殺人という行為が身近にあってはならない、とする本質的な忌避感から、犯人は自分たち健常者とは決定的に違うのだ、と強く願いたい気持ちが、その質問には反映されているように思える。

ただ、決定的に違う要素がないでもない。その犯人たちは多くの場合、「サイコパス」の要件に当てはまると考えてよい。たとえば、話題になった例では、男性連続不審死事件の木嶋佳苗被告、尼崎死体遺棄事件の角田美代子被告などがサイコパスではないか?と評された。

近年では、夫や交際相手など複数の男性を青酸化合物で殺害したとして、京都府警に殺人容疑で逮捕された、筧千佐子容疑者がそれに該当しそうだ。
結婚・交際と殺人を繰り返し、多額の資産を得てきたという。

報道各社の取材に対してこう答えていたというのが印象的だった。
「男が私に求めるのは料理と洗濯、そして夫婦生活」

ごく普通の内容だ。大して特別な何かをして男性を惑わせているわけではない、というところに意識が向いた。筧千佐子容疑者は、容姿に特筆すべき何かがあるというようなこともなく、一見、意外なほど平凡な主婦に見えた。この普通の主婦が、『女』を巧みに使って多くの男性を誘惑し、男が安心しきった頃合を見計らって無情な犯罪を繰り返してきたというのだ。

つまり、男を食い物にしようとするステルス型の女がいる・・・
ということになるのだが、この事件を、みなさんはどう受け止めただろうか。

殺人にまで至らずとも、ATM扱いされる、などと自虐的に語る中高年の男性を時折みかける。Googleで「夫」という語を検索すると「夫 殺したい」とリコメンドが表示されたという話題が以前ネット界隈を賑わせたが、こうした事件が、男性が結婚そのものを忌避するきっかけになることもあるのかもしれない。

さてそれでは、サイコパスの正確な定義をご存じの人はどれほどいるだろうか。
異常な動機で凶行に及ぶ人?
冷酷な知能犯?
常人には想像もつかない異常性を持つ犯罪者?
こんな人かな、とふんわりしたイメージで把握している人が大多数かもしれない。

サイコパスの診断基準項目としては、PCL-Rという成人向けのチェックリストが使われている。1970年代に開発され、91年に改訂版が公開された。
末尾の"-R"はrevised(改訂版)を表す。

さっそく、どんな項目があるのかをみてみよう。

1. 口がうまく、表面的には魅力的
2. 自己中心的でうぬぼれが強い
3. 嘘をつかずにはいられない
4. 人を操ろうとする
5. 後悔したり、罪悪感を感じたりしない
6. 感情が浅い
7. 冷淡で、人に共感しない
8. 自分の行動に責任を感じない
9. 退屈しやすく、刺激を求める
10. 寄生虫のように他人に依存する
11. 欲望を抑えるのが苦手
12. 性的に乱れている
13. 現実的な長期計画を立てて行動できない
14. 衝動的に行動する
15. ルールを頭では分かっているが、責任を取らない。義務を放棄する
16. 少年・少女時代から犯罪歴がある
17. 幼児期から問題行動が多い
18. 保護観察・執行猶予期間の再犯がある
19. 短期間に結婚・離婚を繰り返している
20. 多様な犯罪歴がある
(項目は、英語版PCL-Rをわかりやすく書き直したものをこちらに紹介させていただいた)

これら診断基準20項目について、どの程度当てはまるかで、0点、1点、2点と得点を算出し、その合計点で評価する。30点以上でサイコパス、20点以下でサイコパスでない、とされる。

いかがだろうか?
生兵法は怪我の元、専門的な教育や訓練を受けた人向けのチェックリストを、素人が自分や他人に適用するのは危険であり、慎重に扱わねばならないが、サイコパスがどんなものなのか、理解するためにはいい材料となるだろう。

青酸化合物事件を念頭にリストを見返してみると、特に10番(寄生虫のように他人に依存する)、19番(短期間に結婚、離婚を繰り返している)などは興味深い。

それでは、こうした特徴的な行動をするサイコパスたちの脳は、普通の人たちとどこがどう違うのだろうか。

(後編につづく)


中野信子さんの最新刊「あなたの脳のしつけ方」(青春出版社刊)
是非ご注目ください。
詳細はこちら↓
http://www.bigbenn.jp/20151109/1029/

(終わり)


■3.宋文洲のTV出演のお知らせ

2015年12月13日(日)13:30~
読売テレビ「そこまで言って委員会NP」
http://www.ytv.co.jp/iinkai/

※放送エリアが限られます。下記からご確認いただけます。
http://www.ytv.co.jp/iinkai/area/

(終わり)

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