ページの先頭になります。

ページ内を移動するためのリンクです。

ここから本文になります。

宋文洲のメールマガジンバックナンバー第316号(2016.12.16)

ミヤォミヤォ


━━━

1.ミヤォミヤォ(論長論短 No.283)
2.オフライン小売の終焉の始まり?・・・京東到家
 (Yo-ren Limited CEO 金田修・連載 第7回)


━━━

■1.論長論短 No.283

ミヤォミヤォ
宋 文洲

ミヤォミヤォが天国に逝きました。2時間前にはまだ頑張って自らトイレに行っていましたが、気が付いた時には息をしていませんでした。

ミヤォミヤォは我が家の猫です。7年前、子供たちに「北京に住むなら猫を飼ってあげるよ」と言って家族4人で北京に移住しました。白い子猫のミヤォミヤォと出会ったのは移住した直後でした。中国語を一から勉強しながら地元の生活と勉強に慣れていく子供たちにとってミヤォミヤォは言葉の要らない地元の最初の友達でした。

そのうち、子供たちは学校の友達を家に連れて帰ってくるようになりました。
性格が温厚なミヤォミヤォは人気者で子供達に友達を誘うネタとしても使われました。ミヤォミヤォに会うために来るようになった友達さえいました。

北京の冬は乾燥する上、寒いのです。おまけにPM2.5も心配の種でした。しかし、広い家の中は快適でした。各種植物がたくさん置かれ、機械で空気の温度、湿度と清浄度を快適なレベルに管理していました。何よりも、いつも両親、おいしい料理とミヤォミヤォが待っていてくれていたのは子供達にとって良かったと思います。

言葉も環境も不慣れな海外への移住に躊躇する人は多いと思いますが、現地に快適な居住環境を築くことが大切だと思います。我が家の場合、地元でペットを飼うこともその快適さを確保する一環でした。

落ち込んだ時や困った時に、ミヤォミヤォはそっとそばに寄り添ってくれました。
手でお腹を撫でると喉からゴロゴロと音を出しますが、それが何とも言えない癒しになりました。気が付いたら自分のほうが慰められていました。

3年後、子供達は中国語がペラペラになり、中国各地に旅行によく出かけるようになりました。4年後には子供達は英語も始めてアメリカの旅行やサマーキャンプにも行くようになりました。家族で出かける時、ミヤォミヤォはいつも心配の種でした。久しぶりに帰ってきた時、ミヤォミヤォはしばらく鳴きやみませんでした。
たぶん「寂しかったよ。帰ってきてくれてうれしい。」と言っていたと思います。

5年後、子供達を日本に連れて帰ることにしました。日本語のレベルアップと日本での経験が必要だと思ったからです。当然、ミヤォミヤォも連れていくのですが、免疫手続きが3か月かかるため、姉の家に預けました。ミヤォミヤォは私達が姉の家に置いてきた衣類や家具の匂いを鳴きながらよく嗅いでいたそうです。

3か月後、ミヤォミヤォを連れ戻すために私と妻は北京に行きました。一緒に空港に向かい、飛行機に乗る風景は今も脳裏から離れません。北京生まれのミヤォミヤォが海を越えて日本に「移民」したのです。

日本に戻って2年たった今年の春、子供達が米国の留学先が決まって入学準備している間に、ミヤォミヤォは急に食べなくなりました。病院に連れて行ったら腎臓病が進んでいて余命が数か月から一年と言われました。

その時まず頭に浮かんだのは「ミヤォミヤォは大役を果たしたからもう帰るのか。」という思いでした。

もともと子供達を海外に誘うためにミヤォミヤォを飼いましたが、その子供達が家を離れて海外へ一人旅に出かける時に、ミヤォミヤォが生の旅を終えようとしていることは偶然だと思えないのです。「ミヤォミヤォも一人旅に出かけるのだ。天国への旅に。」と思ってしまうのです。

最後の日、妻はミヤォミヤォを抱いて彼が大好きな散歩コースに連れて行きました。
もう声が出ないミヤォミヤォは途中、急に力を振り絞って「ミアォ!」と一回だけ鳴きました。そこは彼の散歩コースの中で特別好きな場所でした。
妻はミヤォミヤォをそこに降ろして、しばらく座らせました。
その晩、ミヤォミヤォは逝きました。

翌日、私はそこにミヤォミヤォのお墓を掘りました。別荘に有った木材で棺を手製し、眠ったようなミヤォミヤォをその中に入れて埋葬しました。
妻は泣きながら土を被せました。

お葬式が終わって気が付いたのですが、ミヤォミヤォが選んだ場所は私達家族が大切にしている大きなホオノキの根元でした。

(終わり)

今回の論長論短へのご意見はこちらへ↓
http://www.soubunshu.com/article/444705285.html
※いただいたご意見は自動的にコメントに掲載されます。
名前も掲載されますので、問題がある場合はペンネームをご入力ください。
また、次回以降の宋メールでご意見を掲載させていただく可能性がありますので
ご了承お願い致します。

【ソフトブレーンFacebook】でも宋メールへのコメントお待ちしています↓
https://www.facebook.com/softbrain.co.jp/

宋のTwitterはこちら↓
http://twitter.com/sohbunshu

今までの論長論短はこちら↓
http://www.softbrain.co.jp/mailmaga/list.html

■2.Yo-ren Limited CEO 金田修・連載 第7回

オフライン小売の終焉の始まり?・・・京東到家

金田 修

今回は中国のスーパーマーケットを一網打尽にしつつある「京東到家」というサービスのお話です。今後あっという間に中国のスーパーの店舗数は今の半分になってしまうかもしれません。

まず中国でこの数年一気に成長したサービスの一つとして「外食デリバリーサービス」があげられるます。上海の弊社オフィスが入居しているビルで起業した外食デリバリーサービス業界最大手の「餓了マ(口に馬の漢字)」を筆頭に「百度外賣」など複数のプレイヤーが乱立し、会社のランチや午後のコーヒー、更にはちょっとしたデザートまでも、弊社社員はほとんど宅配で済ませています。

デリバリーのモデルはかなり強引で、とにかく安い配達員をアプリ・サービス側が大量に管理します。ロケーションを管理された配達員がタクシーのように配車待ちをしており、注文が入り、デリバリーする商品が準備できると配達員は指示に従って届けるといういたってシンプルな仕組みです。

「京東到家」は同じモデルのスーパーマーケット版です。近くにあるスーパーがアプリ上に一覧で並び、自分の買いたい商品を検索するとそれぞれの店舗での販売商品と価格一覧からサクサクと買い物ができます。商品が購入されると、配達員がお店でのピッキングまたはピッキングされたものを受け取って1時間以内(実際にはまだ2時間以上かかることもある)を目標にお届けする、というサービスです。

「京東到家」の配送一回につき限界費用は配達員に支払う固定の3元だけなので、大体一店舗30元ぐらい買えば何らかの配送費優遇があり、あちこちのスーパーで特売品をつまみ買いしてもユーザーの支払い額にはあまり響きません。

現在このサービスは通称新達達と呼ばれる会社が運営しています。2014年に創業したMITの物流工学を卒業したカイ佳祺が作ったデリバリーサービスなどを引き受ける即時物流専業のスタートアップである「達達」と中国でアリババにつぐECのプラットフォーマーであるJD傘下にあった「京東到家」が今年の8月に統合して出来た会社で、更に10月にはウォルマートから5000万ドルの投資が発表され今に至ります。

現在このウォルマートからの資金など、大量に流れ込んでいる投資マネーを活用して、このアプリに入会すると50元(800円)相当のクーポン券が配布されるなど強烈な新規入会キャンペーンを展開しており、一気に入会数が増加しています。但し、このサービスは原価率が低く、デリバリー事業が世界各地で成立している外食とは全く違う話だと思います。

スーパーは何万もの商品を並べ、特売品は赤字覚悟でお客様を店舗に引き込み、ついでに利益率の高いものも合わせて買って頂きながら、ギリギリの粗利を確保するというビジネスです。外食の半分から下手をすると4分の1ぐらいの粗利でビジネスに取り組んでおり、個別店舗からの配送は追加物流コストをまかなうハードルが非常に高く、世界中で広範に 成功したモデルがない領域のビジネスです。

そのため収益化に向けてのハードルは極めて高いと思います。実際にグループ全体として依然赤字体質のJD内部のメンバーに聞いても、この事業は統合も必ずしも上手く行っているとはいえず、社内的には微妙なプロジェクトと位置づけられているようです。

とはいえ、仮に世界に先駆けてビックデータと安価な配達員の供給に基づく物流コストの最適化と顧客をスマホのプラットフォーム上に載せたことで得られる広告費などの追加収入でこのビジネスを彼らが成功させた場合、AmazonFreshとは違う方角から世界をリードする小売業態となる可能性を秘めています。

当然このグループが自社でスーパーを持った方がいいということになるでしょうからAmazonFreshとも近づいていくと思いますし、スーパーマーケットが長年成立してきた特売品で消費者を惹きつけるというようなビジネスモデルは崩壊すると思います。

日本では現時点では配達員の費用を考えると成立しない事業モデルかも知れませんが、ウォルマートのCEOが投資発表時のインタビューで語っているとおり、デジタルが先に進化した中国の小売はこれから都市がデザインされていく大多数の世界の未来の趨勢だと思います。つまり、例え生鮮食品であっても、スマホを起点に業態がデザインされるべきだということです。

20世紀後半には車による大量消費社会が訪れて郊外型ショッピングモールが世界中の先進国で広がりましたが、同じレベルの変化が中国では世界に先駆けてこれから起こっていくと思います。つまり、徒歩圏にスーパーマーケットが乱立する必要性はどんどん下がっていき、今食べたい超即時ニーズとエンタメ性の高いテーマパーク以外の生鮮小売はオフラインにお店を構える意味がなくなり、マーケットから退場していくことになるのではないでしょうか。

(つづく)

金田さんが創業したYo-ren LimitedのURLはこちら↓
http://yo-ren.com/ja/

(終わり)

━━━

ページの終わりになります。

このページの上部へ戻ります。