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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第358号(2018.08.17)

上海生活

上海でマンションを借りて落ち着いて生活するのは初めてですが、日本人がなぜ上海好きなのかよく分かりました。近所のショッピングモールには随所に和食レストランがあり、日本の日用品や食品を売るスーパーは何か所もあります。その売り場の規模は東京のスーパーよりも大きく、品揃えも申し分がありません。納豆の種類は日本のスーパーよりも多いと思いました。

北京のスーパーでも日本の食品を調達するのは難しくないのですが、さすがに日本の地方の名産は買えないのでこれまではよく日本の空港で北海道産の白い恋人をお土産に買って持っていきました。しかし正直、ここ十年で、日本から何を持っていけばいいのか、ますます悩まされるようになりました。

上海の近所のスーパーに行ってみるとその北海道産の白い恋人が山積されています。うっかり買ってきて人にあげると恥をかくところでした。100円ショップの大創から日本のアピタまでが集まるモールがあって、日本より少々高いのですが、中国人客は普通に買い物しています。日本人客はいないわけではありませんが、売り上げを支えているとは思えません。

上海の人々がなぜこんな純日本風の商品を買いに来るかは不思議に思いますが、友人の話によると日本の食品への信頼や訪日中国人の体験による部分が大きいそうです。

統計上の中国人の収入はずいぶん日本人より少ないのに、富裕層が増えたとはいえ、なぜこんなにも高いものが売れるか不思議に思う日本人は多いと思うので、中国人の収入の実態を知る出来事を紹介しましょう。

ソフトバンクの孫さんも投資し、日本に導入した「滴滴打車」をご存知の方もいるかと思いますが、これはUberと同じ仕組みで競争の末、両者が統合してできた巨大なライドシェアと配車サービスです。朝晩の通勤ラッシュの時でも間違いなく乗れるのは、システムのAI機能だけではなく、ピークを予測した上、「滴滴打車」がドライバーに乗車料金以上の奨励金を払うからです。

朝のラッシュ時に子供が通う塾に行こうと思って呼びましたが、やってきたドライバーはとても上品な40代の方でした。「普段は何をしているのですか」と聞くと彼は何と上海華東理工大学の先生だと分かりました。「先生なのにこんなことをする暇があるのですか」と聞くと「夏休みは2か月もあるので、朝晩によく暇な時間ができてしまうのです。通勤ラッシュ時に稼げるのでこうやって・・・どうです?私のドライブに不安を感じないでしょう」

出身地が私と同じ山東省であることもあって実情を聞かせてもらいましたが、夫婦共働きで収入が足りないわけではありません。しかし、彼には大学生の娘がいます。将来海外の大学で大学院に入る予定なのでその留学費用を貯めるために「滴滴打車」のドライバーをやっています。
日本では東京理科大学の先生が夏休み中にライドシェアのドライバーをやって子供の留学費用を貯めることはちょっと考えられないと思います。大学側が許さないだけではなく、先生たち自身もプライドが許さないでしょう。アメリカとなれば、夏休みは旅行やキャンプで楽しむのは当然であって、それを犠牲にして稼ぐことはまずありえないでしょう。

勤勉さと教育への熱心さ。日本や韓国も似たところが多いのですが、これは中国が今後も発展していく最も基礎的な要素だと思うのです。

中国のGDPはアメリカを超えるかどうか、政治家や評論家はよく熱心に議論するのですが、一人一人の市民にとってそれはどうでもよいことなのです。彼らは立場やプライドを脱ぎ捨て良い暮らしとより良い機会を手にする努力は家族のためにするのです。皆さんも上海に来られる機会があったら、ぜひショッピングモールを歩き、ライドシェアの車に乗って上海の活力の元に触れてください。

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