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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第277号(2015.06.12)

グローバル企業の道具に変質するTPP


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1.グローバル企業の道具に変質するTPP(論長論短 No.244)
2.ジェネレーションパス岡本洋明社長からのメールご紹介

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■1.論長論短 No.244

グローバル企業の道具に変質するTPP
宋 文洲

米国のフィリップ・モリスがオーストラリア政府を起訴し、賠償を求めています。
理由はオーストラリアの法律ではタバコの箱に米国より厳しい健康被害の警告を表示する義務があるからです。

TPP交渉の成否は米国議会のTPA(大統領に一任する)法案の通過にかかっているとの報道をよく聞くと思いますが、これはつまり交渉内容を秘密にしないと成立できないからです。日本でも交渉内容の公開を求める圧力が高いのですが、日本政府がこれを拒否しました。

結論ではなくプロセスの透明と議論を大事にするのが民主主義です。本来、日米の政治家達にはこの原則を知らない人はいないです。外交や軍事などの分野はともかく、健康、医療、食品などの市民生活に大きく関わる経済協定の交渉プロセスを秘密にしなければならないとは不思議だと思いませんか。

経済人として、私は昔から日本は積極的にTPP、FTAなどの締結を進めるべきだと考えてきました。企業改革を促し、関税とコストを下げ、企業と消費者の双方にメリットをもたらすからです。しかし、フィリップ・モリスのような勝手な行為を支持した訳ではありません。

オーストラリアや日本などの国々では、民主主義システムが稼働し、法律と規制は透明な議論を通じて民主主義的プロセスを経て作られているのです。

周知のように現在のTPPは対等関係ではなく、米国に実質的に支配されています。
その米国もTPPの中身を自国民に秘密にせざるを得ないのはフィリップ・モリスが期待するような勝手なルールが多く盛り込まれているからです。

日本の健康保険や医療システムは米国のそれより遥かに良いとの評判です。
食品、金融、知的保護などの基準や規制も日本人のマインドや生活に合うように作られ、米国のそれに劣らないのです。にもかかわらず、米国と異なるだけで自国の基準を否定される上、莫大な賠償をグローバル企業に請求されるのです。

最も大きな影響を受けるのは医療分野でしょう。今後、米国製薬メーカーの薬や機器を使った場合、薬や機器だけではなく、それに関連する手術などのサービスにも、知的財産の使用料を払うことになるのです。韓国は米国とFTA締結後、医療費が三倍になりました。

資本の原理で巨大化していくグローバル企業。彼らの都合で作られたルールが国や地域の民主主義ルールを凌駕するこの矛盾に気付く人が多くなり、米国や日本の市民から抵抗と反発が巻き起こっているのです。

TPPを無理やり進める勢力が抜いた最後の宝刀は「安保」です。ここ最近の「TPPが空母に相当」「中国に対抗するのに不可欠」などの声は予想通りです。
行き詰まる時は安全保障や国家対決を持ち出し、経済の議論を圧迫するのです。

90年代のクリントン政権ではボーイングなどの大企業が中国市場を占領するため中国のWTO加盟を政府に進言したのです。その時の言い訳は中国をWTOに取り込むことで民主主義を中国国内に浸透させ、米国の安全保障に有利だと主張したのです。

利潤追求を唯一の目的とするグローバル企業が主義主張と国家戦略を持つ訳がありません。WTOと同様、20年後はまたTPPに代わる別のルールを求めるでしょう。
その時の米国がまだ今のような力を持っていればよいのですが。

P.S.
昨年の今頃ここで紹介した岡本洋明さん(ソフトブレーンを退社して起業して上場を果たした)からメールをいただきました。大変良い文章だと思ったので皆さんとシェアしたいと思います。元南極隊長の福西先生の連載は今回休ませてください。

(終わり)

今回の論長論短へのご意見はこちらへ↓
http://www.soubunshu.com/article/420496962.html
※いただいたご意見は自動的にコメントに掲載されます。
名前も掲載されますので、問題がある場合はペンネームをご入力ください。
また、次回以降の宋メールでご意見を掲載させていただく可能性がありますので
ご了承お願い致します。

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http://twitter.com/sohbunshu

今までの論長論短はこちら↓
http://www.softbrain.co.jp/mailmaga/list.html

■2.ジェネレーションパス岡本洋明社長からのメールご紹介

宋さん

少し時間が経ちましたが元気ですか?
今日、小泉元総理大臣と会う事が出来、原発反対について聞いてみました。
聞いてみると原発推進派だったのですが、自分の無知もあり大きく変わったそうです。流石に総理大臣やっていた方だけあり理路整然としていて納得したので、共有したく以下要約してみますので時間があるときにでも読んでください。

原発は、小泉さん自身が総理大臣の時には推進派だったが、福島の事故を見て完全に反対になった。

原発推進派が言う、原発のメリット
(1)コストが安い
(2)安全である
(3)クリーンなエネルギー
と言っているが嘘だらけ。

(1)コストが安い

エネルギーの転換効率だけを言えば確かに安い。しかし、そのコスト計算には、設置コスト、地域への交付金、廃炉の処理そして核廃棄物処理コストが入っていない。

安いコストであるなら東京電力程の会社であれば自社でやれば良いが、設置コストへの補助金、設置自治体への毎年恒常的に支払われる交付金は全てと言っていいほど国の税金。政府の補助金(=国民の税金)が無ければ全く出来ない事業である。

核燃料のゴミである核廃棄物の処理は、世界中どこも出来ていないし、日本では中間廃棄物処理場すらも出来ない。廃棄物は10万年保管しなくてはいけないことになるが10万年後に「これは開けてはだめ」といった言葉がわかるのか?わずか1000年前の言葉すら解読できないし、人間は興味本位で1000年もしないうちに興味が勝って開けてしまう方が人間の歴史上普通ではないか。
(ダメと言われればのぞいてみたくなるもの)

10万年というのは永久ということで、それに対応するとして、世界で唯一フィンランドのオンカロという場所で地下400m掘って2km四方の場所にとやっているが、まだスタート出来ずしかもそれだけやっても原発2基分の今の分しか出来ない。
フィンランドは岩盤国家だが日本では400mも掘ったら温泉が出るのが落ちだし、モンゴルだろうがどこも廃棄物処理を引き受けないのは国際常識で自国で処理するのは当たり前。この廃棄のコストは全くエネルギーのコスト比較に入っていない。

(2)安全である

30年間で、全く立ち入り禁止のエリアを創り、しかも30年経っても解決できない大事故、79年のスリーマイル島、86年のチエルノブイリそして4年前の福島。
どこが安全か?

しかも細かな事故は多発して、大事故の際は全く対応できない事実。
その事実の中、多くの研究者や政治家は無視できるほどの安全があるというが実際とは違うではないか。私も総理時代に騙された。

福島では、何年も経っているが毎日6000人の作業員が入っている。作業員は毎日防護服を着て入り、その防護服は一度着たら捨てなくてはならない。
捨てるといっても燃やすことも出来ない核関連廃棄物であるから、どんどん溜まっている。毎日6000着。製造会社は良いかもしれない(笑)が全部税金で賄っているという事実。

(3)クリーンなエネルギー

原発は海のそばに設置される。それは冷却や発電の為に海水が必要だから。
大量の海水を吸い上げ、問題ない程度の放射能汚染水を海に垂れ流す。しかも海水である以上、海の微生物が、大量にある原発の配管に詰まるから塩素系の薬剤を使い詰まらないようにしてそれを大量に放出する。

温められた大量の温水は海に流され、その排水口の周りは生態系が変わってしまい、さらに塩素が含まれているため死の海さながらとなっている事実。
それでも問題ないという。

これら(1)(2)(3)はわかっているのに報道もあまりされず、経済効率だけで話を進めている。普通に考えれば経済効率でさえないのがわかるし、私に誰も「間違っている」という人はいない。「変人」と言われるが、わかっているのに国民に嘘を言うキチガイ達よりも良いと思う。

経団連の人たちに、「将来原発無しでも良いが、今は無理で日本の経済がおかしくなってしまう」と2年前に言われたが、もう2年間原発は動いていないがダメになっただろうか??世界で原発を持っているにも関わらず、動かさずにやっているのは日本だけでありそれを誇りに思えないか。

→ ここからは小泉節みたいで、でも考えさせられました。

日本はいつもピンチをチャンスに変えて勝ってきたではないか。1970年代のオイルショック。自分が衆議院議員に初めてなった頃、1バーレル$2だった原油が$10に跳ね上がり、日本中がパニックになったが、その後1バーレル$150を超えたときに日本はパニックにならなかったではないか。
それは、代替エネルギーや省エネ技術を開発してきたからだ。オイルショックの後に油に頼らないエネルギーとして原爆の呪縛を乗り越えて生まれた一つが原子力発電。ピンチに対応した過程。

企業もトヨタが前の社長の時に、米国でとてもクリアできない排ガス基準を設けられて、米国でトヨタはもう終わりだとか言われたが、その無理と言われる基準を突破して今、トヨタは米国で一番売れている車になり世界一になっている。

NHKの朝ドラで注目されたイギリスのウイスキーも、サッチャー政権の時に、同じ蒸留酒の焼酎とウイスキーの税額が違うという事で、是正しなくてはならなくなった、その時多くの焼酎製造会社が潰れると言われたが、現実はどうなったか?今や日本酒よりも焼酎の方が高級酒としてブランド化までされているではないか。

最大は、大戦後の復活。満州は日本の生命線と言われていたが、満州はおろか朝鮮も樺太も台湾も無くなったが、戦前よりもよほど発展しているではないか。
日本の国民はいろいろ言うが、過去もそうだが現在だって、省エネと言われてLEDが出れば、価格は高いのに省エネのためと家庭のLED普及率は世界一だ。

原発も同じで、これを生命線とか競争力がというが、すでに2年も使っていないし、電力も余ってきているではないか。これは、「昭和16年の敗戦」という本そのまま。この本は、当時の首相の近衛さんが、シンクタンクを創りあらゆる角度から対米戦についてシミュレートして「戦ってはならず、戦えば必ず負ける」という結論が出て、当時の国会でも発表されている。にもかかわらず、生命線に拘り過信して、同年の真珠湾攻撃。結果はご存知の通り。

将来に禍根を残し、現在も危険な原発は、本来、政治が「辞める」と決めて、そうすれば、その困難な状況でも英知を集めて日本人は対応していくはずである。
ピンチをチャンスに変えられるからこそ、資源の無い日本が生き残ってきたのであり、企業も皆それぞれ同じではないかと。

このような話でした。

宋さんほどでは無いにしろ、今の会社も小さいながら多くのピンチがありそれをチャンスに変えて来たところもあり、これからもそうありたいと久しぶりに頑張らねば感が出ましたよ

岡本

(終わり)

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