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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第266号(2015.01.09)

変化が起きる唯一の原因


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1.変化が起きる唯一の原因(論長論短 No.233)
2.「女性化」する男子たち
  (社会学者 古市憲寿さん 連載 「男はつらいよ」 第4回)


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■1.論長論短 No.233

変化が起きる唯一の原因
宋 文洲

1985年の秋、私はカバン一つで日本に来ました。あの秋の北京の青空と自転車の大群、そして北海道の紅葉と日本人の優しさは一生忘れません。
しかし、何よりも忘れられないのは日本の景気の良さでした。

21歳の私はただ素直に目の前にあるものをそのまま呑み込めば良かったです。
異なる体制と異なる発展段階の国に来てすべてが新鮮でした。当時の自分は30年後に日本、中国、そして世界がどう変わるかにまったく興味がありませんでした。

昨年末、尊敬している70代の経営者と会ってたまたまビジネスのグローバル展開の話をしました。著名な経営者の彼は「中国の現体制はいずれ崩壊するので中国への投資ボリュームを抑える」との方針を教えて下さいました。
しかし、その直後、彼は「中国はどうなるかを宋さんに聞きたい」と聞いてきました。

「大丈夫だよ、30年前も同じ心配していたでしょう」と言えば「やっぱり中国人は自国を悪く言わないな」と思われるし、「はい、必ず崩壊します」というと「じゃいつ頃だと思うか」と聞かれてしまいそうです。だから私はいつも「分かりません」と答えるのです。

実際に本当にわかりません。経営の醍醐味は表層現象に翻弄されず社会の底流を読むことです。自信を持たなくても覚悟を決めて「やるかやらないか」を選ぶのです。どちらを選んでも、その選択肢に必ずリスクがあります。
それを直視してこそ経営です。

人生においても同じです。21歳の私は将来への予想はなくても良かったのですが、会社を経営していた30代の私は10年後のトレンドをみて経営内容と本社の場所を決めました。40代の私は20年後のトレンドをみて経営をやめて北京に戻る決心をしました。

やはり先述の先輩経営者には、当時「宋さんはなぜ北京に生活の拠点を移したか」と聞かれました。私は「子供に中国語を覚えさせるためでした」と答えました。しかし、それはごく小さな部分でした。私は未来の30年のトレンドを、久しく離れた中国の内部から、そして中国民衆の視線から見てみたかったのです。

たぶん、一部の読者は既に気付いていると思いますが、この5年間で私のコメントはかなり変わりました。「反日」と感じるかもしれませんし、「中国寄り」と映るかもしれません。「中国に洗脳された」と思われるかもしれません。

しかし、私はあくまでも私自身、私の家族、そして私の友人、私が好きな人々のために生きています。こうしてメルマガを書いているのも、誰かに影響を与えたいからではなく、私の私見を参考にしたいと真剣に考える読者がいるからです。私と同様、社会の底流を読もうとしている読者の皆様がいるからです。

「人は同じ川に二度と入れない」。これはあるギリシャ哲学者の言葉ですが、川は流れて中身が常に変わるという意味です。同じ体制にみえても30年前の中国と今の中国はまるで別物です。体制が崩壊したのではなく、変化したのです。
この意味でいうならば、確かに中国は毎日崩壊し続けています。
そして静かに毎日再建し続けているのです。

「三十年河東、三十年河西」という諺があります。国家は30年も経てば別物に変わるという意味です。社会変化の唯一の要因は時間であり、崩壊、戦争、革命などはあくまでも変化の形式の一部に過ぎないのです。

いつ起きるか分からない相場や体制の崩壊を待つよりも、今日も確実に進む変化の流れを読むのは企業と個人の生存にとって最も重要なのです。
相場が崩壊しても次の相場がまたやって来ます。流れを読めない人はチャンスを掴めず、また次の相場崩壊を期待するのです。

(終わり)

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今までの論長論短はこちら↓
https://www.softbrain.co.jp/mailmaga/list.html

■2.社会学者 古市憲寿さん 連載 「男はつらいよ」 第4回

「女性化」する男子たち
古市憲寿

男性的な価値観はもう時代遅れらしい。男たちは一体どうしたらいいのだろうか。

実はどうするも何も、若者たちは徐々に「女性化」する社会に適応しつつある。
たとえば僕が若者のことを語る時にロボットのように例に出す生活満足度調査の数字を見てもその傾向を確かめることができる。

数十年の変化を追ってみると、生活満足度は一貫して女性のほうが高い。
たとえば1985年だと20代男性の満足度が59.6%なのに対して、女性では79.7%もあった。理由の一つは、女性のほうが将来に対する期待がそもそも低かったことだろう。雇用機会均等法施行前夜、仕事によるキャリアアップが現実的ではなかった女性たちは、「まあこんなものだろう」と早くから自分の人生に折り合いを付けていた。

それが最近では、男性の生活満足度も上昇してきている。もはや男性であっても、「将来のために今は辛くても頑張る」という発想から距離を置き、身の丈にあった希望を受け入れつつあることの証左だと思う。

若い男の子たちが女性化するのは、当然といえば当然だ。正社員になれるかわからない。給与が上がるかもわからない。そんな彼らが「男らしく」なるなんて無理に決まっているのだ。

一般職の募集に男性が集まるという事例も増えている。幹部にはなれないが、転勤もなく長時間労働も強いられない一般職が、男性にとっても魅力的なものになっているのだ。

「女子会」ならぬ「男子会」も人気だ。僕の友達も、平日は普通に会社員をしながら、週末は友人たちとカフェを開いたりしている。『Hanako FOR MEN』や『Men's Lee』といった男性向けライフスタイル誌の創刊に象徴されるように、仕事一筋の生き方が本格的に見直されている。

飲食のスタイルも変わった。かつては男の飲み物と言えば、コーラや缶コーヒーなど効率よくカフェインを摂取できるものが一般的だったが、今や「水筒男子」の時代。効率性など、昭和を支配していた男性的な価値観がことごとく時代遅れなものになりつつある。

(つづく)

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