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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第302号(2016.05.27)

トランプは既に勝った

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1.トランプは既に勝った(論長論短 No.269)
2.倒産減少の影で増え続ける「倒産予備軍」
 (東京商工リサーチの河原光雄社長・連載 第2回)


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■1.論長論短 No.269

トランプは既に勝った
宋 文洲

日本では単なる右翼候補としてしかイメージが伝わっていないトランプですが、私は昨年から既に好感を持っていました。昨年のクリスマス前にボストンのホテルでテレビ弁論の中継を見ていたところ、他の候補達との違いが目立ちました。

その違いは過激さではありません。他の候補達はこれまでの通りの米国エリートのように振舞いましたが、トランプは自分の考えを述べていました。その考えは明らかに主流マスコミやエリート政治家の流れに沿っていませんが、かなり道理にかなっていました。

日本では米軍撤退すべき、日本は為替操作している、など日本に関連する部分だけを日本では報道するのですが、トランプは中国にもロシアにも厳しいことを言っています。また、メキシコとの間に壁を作るとか、イスラム教徒入国禁止とかの過激発言が問題になっているのですが、なかなか解決できない米国の難題(貿易赤字、テロ)に劇薬の処方箋を出したとも言えます。

これらの発言は目立ちますが、トランプの主張のごく一部に過ぎません。
トランプの主張の全体を聞いて私は感心しました。なかなか問題の本質に迫っている上、米国が長年直面している難題に正面から取り組もうとしている気迫を感じました。

米国の統計数字をよく見ないと気付きませんが、米国経済が回復しても、米国民の所得は回復していません。2004年を100とすれば、米国民の実質平均所得は97に落ちました。多数派が形成する中央値はなんと95に落ちました。
さらに所得下位10%は92に落ちました。所得上位の5%だけが101に増えました。

つまり、共和党ブッシュと民主党オバマの政権下では、少数のスーパーリッチを除けば、殆どの米国民はこの12年間どんどん貧乏になった訳です。民主党政権の下でこの傾向が強くなったのはまた皮肉なことです。

故に米国民はもはや政党ではなく、大統領候補個人の主義主張に注目しているのです。共和党でも民主党でも従来政策の延長線上にいる候補達は人気がないのです。これこそ米国マスコミやエリート達が予想もできないトランプとサンダースの人気の理由です。

格差拡大を食い止める具体的な政策として、トランプとサンダースが共にTPPに反対し、富裕層への増税を打ち出しているのです。世論を見てクリントンもTPP反対色を出さざるを得なくなりました。

外交の面においても、トランプの主張はなかなか本質に迫るものが多いのです。
「民主主義の土壌のない中東に民主化を推進しても混乱をもたらすだけ」、「北朝鮮も会話すれば解決可能」など、米国の主流政治家達がタブーとしてきたことに果敢に自分の本音を述べるトランプに、多くの米国人が共感したはずです。

これに対してクリントンの主張は万年政治家そのものです。ウォール街の支持を得ながら黒人や女性などの少数派にも配慮できる演出をしているのですが、正直これらは既にオバマに使い果たされました。それよりも彼女は、何か新しいことを米国にもたらすために大統領になるよりも、なるべき人が大統領になるという執念がミエミエです。これも有権者に伝わっているのです。

残り半年、何が起きるかはわかりませんが、ヒラリーが大統領になってもトランプの影響力は既に勝ちました。米国民のこの変化は、同様に大手企業と大手マスコミに頼る安倍政権に影響を及ぼさない訳がありません。

(終わり)

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■2.東京商工リサーチの河原光雄社長・連載 第2回

倒産減少の影で増え続ける「倒産予備軍」

河原 光雄

宋メールの読者のみなさま、こんにちは。東京商工リサーチ(TSR)の河原です。
前回は、信用調査業の成り立ちについて、お話させて頂きました。信用情報は、今も昔も変わらずフェイス to フェイスを中心に収集し、質の高い情報の提供に努めていることを紹介致しました。

なぜ、お客様は私どもから信用情報を入手されるのでしょうか。「取引先の倒産による焦げ付きを防ぐため」という理由が一般的ですが、逆に仕入れであっても仕入先のコンプライアンス問題や安定供給が可能かなど、企業を取り巻く様々な状況を把握するという目的もあります。そのような中で、企業経営を継続し続けることができるかがポイントとなるわけですが、負債が超過し支払いができなくなった場合に一般的には「倒産」と呼んでいます。

では、「倒産」とは企業がどのような状態に陥ったことを指すのでしょうか。
「倒産」を日本で初めて定義付けたTSRでは、以下のように分類しています。

1)法的手続き(会社更生法、民事再生法、破産、特別清算)の申立がなされた時
2)銀行取引停止処分を受けた時
3)内整理した時
1)を「法的倒産」、2)と3)を「私的倒産」と呼んでいます。

倒産の統計データはいくつかありますが、TSRは1952年(昭和27年)の集計開始から定義を変えておらず、内閣府の「月例経済報告」に採用されるなど、景況判断の一つに活用頂いております。

倒産件数は、近年右肩下がりで推移しています。2015年度(4-3月)の全国の倒産件数は8,684件で、7年連続で前年度の件数を下回りました。これはバブル景気末期の1990年度の7,157件に次ぐ少なさです。バブル期ほど景気実感がないのに、倒産が少ないのは何故なのでしょうか。それは、金融機関が返済猶予(リスケ)に柔軟に応じているためです。

2008年のリーマン・ショックで世界経済は大きな痛手を受けました。日本もこの波に巻き込まれ、2008年度の倒産件数は1万6,146件に達しました。
このため、政府は景気対策として「金融円滑化法」や支援制度の拡充など様々な対策を実行しました。これら政策効果から倒産は抑制された状態が続いているのです。

倒産の減少を手放しに喜ぶことは出来ません。銀行から借りたお金の返済方法の変更を要請(貸付条件変更等の申込)した企業は、現在30万~40万社ほど存在すると言われているのです。これらの企業の中には、再建への道筋を描けていない企業がかなりの数存在しており、今後、何らかの不測事態が生じた際には倒産に至る恐れがあります。金融円滑化法の施行や同法が終了した後も続く金融支援によって、倒産件数こそ減少しましたが、水面下で崖っぷちの「倒産予備軍」が増加しているのです。

このように、企業の信用力を判断(与信判断)するには、その企業の経営実態を把握することはもちろんのこと、リスクのトレンドを把握することが肝要です。
与信判断で「木を見て森を見ず」は避けなければなりません。

最近になって顕在化したリスクに「チャイナリスク」があります。日本企業は、経済成長が著しい中国企業との取引で成長戦略を描いていましたが、近時の中国経済の景気減速により計画がとん挫し、倒産に至るケースが散見されるようになりました。

昨年(2015年)夏の上海総合指数の下落を受け、2015年10月よりTSRはチャイナリスクに関連した日本企業の倒産発表(集計開始は2014年1月)を開始しました。
TSRではチャイナリスクを、中国での人件費高騰や製造コストの上昇による「コスト高」や、中国消費落ち込みからくる受注減少による「中国景気減速」、在庫調整に伴う相場価格下落の「価格競争」などの8つに分類しています。

2014年度(4-3月)は63件の発生にとどまっていたチャイナリスク関連倒産が、2015年度は120件と倍増しました。2015年夏頃までは、中国経済の拡大に伴う人件費の上昇が顕著であったため、倒産企業は関西地区に所在するアパレル関連企業が「コスト高」により倒産に至ったケースが目立ちました。中国で生産された繊維製品の多くが輸入され、日本国内で流通しています。関西地区は繊維問屋の集積地で大半が小・零細企業であるため、コスト高による利益の低下が経営を直撃したのです。

2015年秋以降は、「コスト高」に加えて新たなチャイナリスクが猛威を振るっており、これにより倒産する企業が増えてきました。
次回は、その内容についてお話させていただきます。

(続く)

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