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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第304号(2016.06.24)

英国民の「私」がEU離脱を選ぶ

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1.英国民の「私」がEU離脱を選ぶ(論長論短 No.271)
2.中国経済の実態と倒産・休廃業動向とは?
 (東京商工リサーチの河原光雄社長・連載 第4回)


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■1.論長論短 No.271

英国民の「私」がEU離脱を選ぶ
宋 文洲

中国も日本同様、英国のEU残留を強く希望しているようです。英国の企業と不動産を大量に買収し、欧州への拠点にしようとしている中国企業が多い上、習近平政権もEUへの影響力を期待して英国との関係を強化してきたからです。

しかし、EUに残留するかしないかは英国民の立場に立って考えなければ問題の本質が見えて来ないのです。他国の態度はあくまでも他国の都合によるものです。

私がもし英国民であれば、つまり英国民の「私」がどう思うかと言うと、たぶん迷いながらもEU離脱を選ぶでしょう。

「私」は難民を受け入れたくないのではありません。低所得層の人々は仕事や福祉が奪われるなどの心配でそのような心情になるでしょうが、経営者やビジネスマンにとって難民はチャレンジ精神が旺盛な安い労働力であり、異なる発想ももたらしてくれます。

「私」がEU離脱を支持する最大の理由は英国の未来を心配しているからです。

日本には「寄らば大樹の陰」という諺がありますが、それは大樹より小さい人々の話です。その大樹と同じくらいの巨人は大樹の陰に寄っても安全でもなければ快適でもありません。大樹の枝にぶつかったりしてお互いに迷惑です。

さらに大樹の陰にも限界があります。あまりにもたくさんの人々が集まるとその陰の意味が無くなります。混雑で身動きが取れなくなり、密度で風通しが悪くなり、体温で温度が上がり、騒音で不安になります。そのうち心理的に弱い人々ばかりが集まり、最初に陰を見付けた人は逃げ出したくなります。

EUに入っても英国は自己通貨を持ち続けました。ユーロとポンドとの関係はまさに嫁と姑の関係でお互いに居心地が悪いのです。より長い時間にわたってより広い範囲において、英国がその潜在力を発揮させるにはEUに拘束されるよりも、自由度をもって世界中で活躍したほうがいいのです。

ソ連崩壊後、東欧諸国が挙ってEU加盟を目指し、今やトルコまで加盟を検討しているところです。EUの理念である政治平等と経済統合は小国や後進国にとっては都合が良いのですが、大国や古い先進国にとって主権の喪失と時間の無駄に過ぎないのです。同じ思いは英国民同様、フランス国民がより噛みしめています。Pew Research Centerの調査ではEU残留反対のフランス国民の割合は英国民よりも高いのです。

EU残留支持派が主張している欧州統一市場へのアクセスの便利さはメリットに見えますが、それは兄弟の多さに期待するようなものです。自分より貧乏な兄弟がますます多くなる今、共同生活を止めたくなるのは自然です。また、残留派はしきりに離脱後の不確定性を強調しますが、これは離婚後の不確定要素を恐れて幸せを掴む勇気を無くした心理です。

人類の歴史を見れば分かるように、永遠の同盟や連合は存在しません。それは永遠の学級とクラスがないと同じ理屈です。世界視野と長期戦略を持つ国が、効率の悪い同窓会に拘束される訳にも行きません。今回、かろうじて英国残留が決まってもこの問題の本質は変わりません。

(金曜日に皆さんがこの文章を目にした時、英国の国民投票の結果が既に出ているはずです。しかし、この文章は私が月曜日に事務局に送ったものです。書いたのは6月18日です。)

(終わり)

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■2.東京商工リサーチの河原光雄社長・連載 第4回

中国経済の実態と倒産・休廃業動向とは?

河原 光雄

東京商工リサーチ(TSR)の河原です。前回は、チャイナリスクにおける日本国内の影響についてお話させていただきました。今回もチャイナリスクに関連して、TSRのアライアンス先で世界2億5,000万件超の企業データベースを保有するDun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート)の独自調査をもとに中国国内のマクロ経済状況と倒産および休廃業動向についてお話させていただきます。

2015年の中国の名目GDPは6.9%と、依然として高い水準を維持していますが、10.4%を記録した2010年をピークに、以降は右肩下がりとなっています。
背景としましては、中国の輸出の伸び悩みがあります。

中国では、「投資」、「消費」、「貿易」の3つを経済の柱として考えており、この3つのセクターをあわせて「三頭馬車」と呼んでいます。2015年は、投資は4.3%、消費は4.6%、GDPのプラスに貢献していますが、貿易に関しては逆にGDP成長率を3%マイナスに押し下げる要因となっています。

これは人件費の高騰に伴い、外資系企業が中国からの資本引き揚げや工場撤退を進めたため、大幅な国際資本の流出が生じたことが影響しているとみられます。

また、中国では製造業の業績低迷が懸念されており、工業部門における赤字企業数は前年比で17.4%増加しました。中国国家統計局の調査によると、石炭業界は90%、鉄・鉄鋼業界は50.5%もの企業が赤字であり、石炭や鉄鋼業への依存度が高い中国北部・東北部の6省は、現在深刻な景気後退に直面しております。そして、この状況は2017年まで続く見込みともいわれております。

では、こうした状況下で中国の倒産件数は増えているのかというと、実はそうではありません。2013年以降、中国の公式統計による倒産件数はむしろ減少しており、2013年に2,217件、2014年に1,938件、2015年は1,307件でした。
これはそもそも、中国における正確な倒産件数を知ることが困難であるという背景があります。

中国にも日本のような破産法が存在しますが、手続きが非常に煩雑であるため、多くの企業は倒産しても破産申立の手続きを行いません。中国の倒産率はわずか0.1%程度となっているという点でも、中国の企業倒産件数が実態経済を現して いるわけではないことがわかります。

一方、中国の廃業動向についてDun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート)は2012年から2014年の間に調査を行いました。その結果、中国では2014年に50万社以上の企業が廃業していることがわかり、同年の倒産件数の約250倍の数 となっています。廃業には自主廃業と受動的・懲罰的な営業免許取消の双方が含まれるので、倒産動向よりも中国の実態経済を反映しているといえるでしょう。

また、同調査における廃業法人250,000社のデータの存続期間の分布をみると、存続年数が長ければ長いほど、廃業法人に占める割合が少なくなっていることがわかりました。廃業法人の約60%が設立後5年未満の企業で、設立後10年以下の廃業法人で全体の約86%を占めるなど、設立から日が浅い企業ほど廃業しやすい傾向にあります。ちなみに、倒産の場合は、設立後12年までに集中する傾向にあり、廃業の場合よりもやや長くなっています。

このように、中国と日本では商習慣だけでなく倒産に対する考え方や法規制も異なります。同様に、欧州やアメリカなど複数の国や地域をまたいで取引を行っている場合には、現地の特性を加味してビジネスを展開する必要があります。
そして、異なる国のリスク管理を行う上で重要となるのが、統一されたフォーマットで構築された海外顧客データベースです。

次回は、Dun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート)が構築している世界最大の企業データベース「WorldBase」の概要についてお話させていただきます。
ぜひご覧ください。

(続く)

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