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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第340号(2017.11.24)

そろそろ日本人は根拠なき精神論と決別すべきだ

中国で日本の経営者といえば、いまだに松下電器の松下幸之助の名前を挙げる人が多い。私は一度も会ったことはありませんが、松下さんの著書や元部下の話によると、彼はとても病弱だったようです。身体が弱かったからこそ、部下を上手く使うなど松下流の独特な経営ができたと、本人はもちろん周囲も口を揃えています。

マイクロソフトのビル・ゲイツの講演を数年前に聞いたことがあります。とても物静かだったのが印象的でした。彼は他人によく質問しましたが、反対意見を浴びても滅多に反論しなかった。ゲイツは自分の判断が正しいかどうかに興味があり、他人がどう考えているかを知っても無意味だと考えているようです。

ソフトバンクの孫正義さんとは何度か会食をしたことがあります。世間話をしている間、彼はとても無気力のように見えました。ほとんど会話に参加しないのです。ただ一転ビジネスの話になると、突如、元気を取り戻していました。

最近、私が嫌いな日本語に「元気がもらえる」、「元気をください」という言葉があります。日本人は本当に精神論が好きですが、多くのビジネス書には「元気を出せば、仕事を頑張る。仕事を頑張れば成果が上がる。だから上司や経営者は部下のモチベーションを上げる努力をしろ」と書かれてあります。しかし元気の有無と、仕事ができるかどうかは何の関係もありません。また「社員は褒めて育てろ」というのも大嫌いなフレーズです。

仕事できない人間に限って、空元気を出し、精神論を振る舞う傾向があります。残業の問題もそうです。用もないのにダラダラ会社に残っている人の大半が仕事のできない人。残業は、上司にやる気を見せるためのポーズでしょう。

成果は、人のやる気に関係なく、仕事の積み重ねによってもたらされるもの。それは花の育ち方と同じです。「愛情を持って育てれば、綺麗に花が咲く」という人がいますが、有り得ない。いくら愛情があっても適切な水分、肥料、日光などの条件が揃わないと花は咲きません。人間の気持ちなどとは無関係です。

一方で上司から「褒めてほしい」というビジネスマンも増えています。「褒められないと仕事ができない」なんて子供じゃないんですから勘弁して欲しい。馬鹿にされたり、失敗したり、自分の仕事を否定されたときに、やるべきことをできるのが真の大人であり、真のリーダーです。

およそ十年前から、日本社会のある変化に気付きました。私に講演を依頼してきた人々に「どんな話をしてほしいですか」と聞くと、「元気になる話がいい」とよく言われるようになりました。当時は、どんな話がいいのか分かりませんでしたが、流行りの「日本スゴイ」話をすれば良かったんだと最近理解しました。

つまり「褒めてもらわないと元気が出ない」弱い日本人が増えたのです。同時に評価されないと元気を出さない経営者も増えた。これは十年前から蔓延してきた大手企業問題でしょう。彼らの精神構造は、敗戦後の焼け野原で地味に仕事を積み上げた松下さんなどとは真逆なのです。

孫氏の兵法にも「哀兵必勝」という言葉があります。敗戦の悲哀を知る兵隊のほうが無謀な戦術をとらないため強いという意味です。自分のいいところを褒めてもらい、都合の悪いことを誤魔化す人は本物の仕事なんかできっこありません。

(「週刊文春」11月9日号
「それでも社長になりたいあなたへ」連載からの転用)

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